長岡高校応援歌物語・第三章 『応援歌(其の二)』

一、鳴呼長高 (中 )に 生気有り
青春の児が 熱血の
諸手にかざす 紅の
柏の旗の 色見ずや
久遠の思い 胸にして
挙げて帰れや 勝関を

二、嗚呼長高 (中 )に 霊気有り
春秋に富む 益良男が
歴史を誇る 諏訪堂の
健児の意気を君見ずや
兜城下に 桂冠を
かざして帰れや 我が選手

三、天麗かに 雲なくも
飛び交う球は 雷か
鍛へに練りし 鉄腕なりて
打てや破れや 敵塁を

この応援歌も元歌が存在するが、いささか込み入った事情がある。この歌は明治35年に発表された唱歌教科書(四)の『ワシントン』という歌を基にしているが、正確には『ワシントン』を基にした慶應義塾大学の応援歌『天は晴れたり』を元歌にしている。


『天は晴れたり』(慶應義塾大学応援歌) 作詞 桜井弥一郎 作曲 北村季晴 (明治40年)

天は晴れたり 気は澄みぬ
自尊の旗風 吹きなびく
城南健児の 血は迸り
茲に立ちたる 野球団


この『天は晴れたり』という応援歌は全国津々浦々、北から南まで、多くの学校(高校に限らず中学校、小学校まで)で言葉を置き換えて応援歌として歌われている。

松本深志(長野)、松本工(長野)、太田(群馬)、安積(福島)、古川商(宮城)、山口(山口)、福岡(岩手)、松山(埼玉)、大館鳳鳴(秋田)、新潟(新潟)、長岡工(新潟)、相川中(新潟)etc.


『福岡高校 第十三応援歌(野球団)』

天は晴れたり 気は澄みぬ
自由の旗風 吹きなびき
福陵健児の血はほとばしり
ここに立ちたる 野球団


『新潟高校 応援歌G』

天は晴れたり 気は澄みぬ
正義の旗風 吹き靡く
青山健児の 血は迸り
此処に立ちたる 選手団


『長岡工業高校 決戦歌第一』

鋸颪(おろし) 吹き荒れて
北越天地に 雲立ち騒ぎ
長陵健児の 血は迸り
ここに立ちたる 工業軍


さて、この『天は晴れたり』の元歌となった『ワシントン』について述べよう。この歌は明治35年に発表された、アメリカ独立戦争の「立役者」初代アメリカ合衆国大統領ワシントンを讃えた内容を持った唱歌であるが、その勇壮な節回しやリズムが慶応義塾大学野球部員桜井弥一郎氏による『天は晴れたり』という応援歌に結びついたのは前述のとおりである。しかし、歌詞の内容を見ると、北米大陸中西部を縦断するロッキー山脈から吹き下ろす寒風が、カナダ北東部にあるハドソン湾を波立たせるという、いかにもアメリカらしい豪快な(?)光景を描写しており、やはり「事実とは異なる」という教育的判断からかいつの間にか歌われなくなった。しかし、旧制中学校の応援歌の中に脈々と受け継がれてきたのである。

実は、この『ワシントン』という曲は一番から三番まであるが、それぞれの最後の部分の節回しが異なっている。


『ワシントン』  「唱歌教科書(四)」  作詞 不詳  作曲 北村季晴 (明治35年)

一、天はゆるさじ 良民の
自由を蔑(なみ)する 虐政を
十三州の 血は迸り
ここに立ちたる ワシントン・・・・・・・(A)

二、ロッキーおろし 吹き荒れて
ハドソン湾に 浪さわぎ
剣戟(けんげき)響き 軍馬嘶く
すわ戦いの 鬨の声 ・・・・・(B)

三、勝利を告ぐる 喇叭(らっぱ)の音
「邦の父」ぞと 仰がれて
ミシガン湖上 秋月高く
輝く君が そのいさお・・・・・・・・・・(C)


(A)ここに たちたる ワシントン (ドーレミ / ララララ /ソソソソ /ドー)

(B)すわ たたかいの ときのこえ (ドドソソ / ミミドー /レレソソ /ドー)

(C)かがやく きみが そのいさお (ソソドー / ソソミド /レレソソ/ ドー)


慶應義塾を始めとする、これに追随する他校の曲はほとんど(A)の旋律を踏襲しているが、長高の『第二応援歌』は(C)の旋律を採用している。応援歌としては(C)が一番盛り上がりや力強さを感じさせる。これだけ多くの学校がほとんど同じ歌詞を引用しているのに対し、我が『第二応援歌』は曲と独創の歌詞がよく調和していて格調高く、既に引用の域を超えて「オリジナル作品」であると言えるのではないかと思う。

全国の多くの高校が形を変えた同じ曲の応援歌を歌っているとを思うと、愉快な気分である。まだまだ、知られていない曲も多いと思うので、新しい情報をお寄せ願いたい。

文: 長高 健児 (ながたか けんじ)
企画・制作: 長岡高校S50年卒「50☆50の会 印刷・HP分科会」
(2006.2.22掲載)

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